PRIME MAISON ASAKUSA EAST
Jun. 2021
労働・居住に関わる環境の変化によって、住空間での滞在時間は増加した。そこで本計画では従来のワンルーム型の居住空間に対して、
・滞在時間の重心が夜から昼に
・行為の軸が就寝から食事/執務に
とシフトした新たな環境下での住空間のあり方を考えた。
一般的なワンルームマンションは1Kという間取りに代表されるように、廊下と一体化したキッチン+居室という空間構成が多く、窓際の居室は異なる行為を一手に受け入れざるを得ない。そこで本計画では、窓際にキッチンを配置し、バーチカルブラインドで間仕切られたベッドルームやワークスペースを別に設けることで、行為に応じて異なる居場所を選択できるようにしている。またこれら以外に断面的な操作も行い、スキップフロアやメゾネットなどの住戸プランも用意することで、より多くの行為と居場所の選択を行えるように計画した。
生活行為を窓際に寄せることは、街との関係も近くなることを意味する。ただし本計画では、バルコニーの面する前面道路の向かいに戸建て住宅や集合住宅があり、計画時より見合いの関係が懸念されていた。そのためファサードに斜め壁のブリーズソレイユを採用することで、開放性を確保しつつ視線の制御が行えるようにしている。
また日射の負荷の大きい夏季において住戸西側壁面の日射取得のシミュレーションを行った結果、斜め壁が南西方向でも北西方向でもほぼ同等に効果が期待できることが分かったため、奇数階と偶数階で斜め壁の向きを変え、近隣対策として視線が特定方向に向かないよう調整している。
住空間での滞在時間の増加は、街との関係性が無くなることを意味しない。ささやかではあるかもしれないが、住まい手によって「友人・知人を招いて食事をする」「バルコニーに座って外を眺める」といった、街に対して主体的になる行為を積み重ねることが、地域と住まい手双方の価値につながっていくのではないだろうか。
用途:共同住宅
敷地面積:574.22m2
建築面積:400.76m2
延床面積:2226.74m2
階数:地上7階
構造:RC造
工期:2020年4月〜2022年6月
建主:積水ハウス 開発事業部 (担当:木村義徳 間渕文楓)
設計:
建築 藤井亮介建築研究所(担当:藤井亮介 三桶士文)
構造 クロスファクトリー(担当:齋藤智紀 平間賢也)
設備 ZO設計室(担当:伊藤教子 根本晋吾)
造園 TREEFORTE(担当:石川洋一郎) /石勝エクステリア
照明 モデュレックス(担当:林真理子)/大光電機(担当:浦山義博)
施工:
建築 日本建設(担当:正垣勝利 後藤理智彦 市川裕記 徳永郁美 西山誼一)
空調 積水工業(担当:中河哲也 阿良和哉)
衛生 積水工業(担当:中河哲也 阿良和哉)
電気 和興電気(担当:安藤隆巳)
写真:鳥村鋼一